sしか》し何処《どこ》の国でも人鬼《ひとおに》は居らぬ、こういう訳で難渋するからと頼んだら助けてくれぬ事もあるまい。さア一生懸命でやれ/\」
文治も手伝って船を漕ぎますが、どうも手ごしらえの櫂といえば櫂、棒同然な物で大海《たいかい》を乗切《のっき》るのでありますから、虫の匍《は》うより遅く、そうかと思うと風の為に追返されますので、なか/\捗取《はかど》りませぬ。其の内に何処《どこ》かの岸へ近づきました。
文「やれ/\信心のお蔭でいよ/\命が助かったぞ、おい船頭、何《ど》うぞしたか」
庄「ウム/\ウーム、旦那々々……旦那……苦しい、薬があるなら早く/\」
吉「これ庄藏、確《しっ》かりしろえ」
文「これ、庄藏とやら、気を確かり持てよ」
と云いながら、手早く印籠《いんろう》より薬を取出して、汐水《しおみず》で庄藏の口に含ませましたが、もう口がきけませぬ、其処《そこ》ら辺《あたり》へ取付きまして苦しむ途端に、固まったような血をカッと吐きまして、其の儘息が絶えた様子。
文「吉公、可愛相なことをしたの、とうとう死んでしまった、折角骨を折って此処《こゝ》まで漕付《こぎつ》けて、もう一丁
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