ヘ悪うございますが、我慢して下さいまし、少しお痛うございましょう……さア出来ました、まア/\好《よ》くお似合い申しますよ、全体お人柄でございますから、本当に好く似合いますねえ」
蟠「やア何時《いつ》の間《ま》にか出来上ってしまったな、ウム、旨い、併《しか》し婆ア近所へも極《ごく》内々《ない/\》にしてくれえ」
婆「大丈夫でございますよ、序《つい》でに召物《めしもの》もお着せ申しましょうか」
蟠「宜《よろ》しく頼む」
婆「まアすッぱり出来上りました、左様ならお暇《いとま》申します」
蟠「くれ/″\も内々にしてくれよ」
婆「はい、宜しゅうございますとも、左様なら」
蟠龍軒はお瀧を連れて松平|某《ぼう》の中の口へまいりまして、
蟠「頼む/\」
中小姓「どーれ……これは/\大伴先生」
蟠「お殿様は御在邸でござるかな」
小姓「はい/\丁度|御前様《ごぜんさま》もお屋敷でござります、暫くお控え下さいまし」
暫くして近習《きんじゅ》が出てまいりまして、
近習「これは/\先生、よくおいでになりました、さア何《ど》うぞ此方《こちら》へ、おうこれは/\予《かね》てお話しの御婦人様でござりますか」
蟠「はい、左様にござります」
近「御前様もお待兼《まちかね》でいらせられます、直《す》ぐお通り下さりませ」
蟠「然《しか》らば御免を蒙《こうむ》ります、さア何《ど》うぞお先へ」
近「どう致しまして、先《ま》ず/\先生、お通り下さいますよう」
蟠「これは恐入ります、仰せに従いまして失礼を致します」
と先立って御殿へ上《あが》る其の様子は、如何《いか》にも事慣れたものであります。
十九
このお瀧という女が、先に申上げました阿部忠五郎という碁打の娘で、碁は初段の位《くらい》でございます。諸家《しょけ》へ奉公致して居りました故、なか/\多芸な娘でございますが、阿部の悪心から終《つい》に島流しになるような不運な身になったのでございます。御殿女中というものは苦労のない割合に、身体を動かしますから、大概は栗虫《くりむし》のように太りかえって、其の上着物に八口《やつくち》がありませんから、帯が尻の先へ止ってヒョコ/\して、随分形の悪いものであります。お瀧は其れとは打って変って成程|眉目《みめ》形は美しゅうございますが、丈《せい》恰好から襟元《えりもと》までお尻の
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