大きにお力が附いて大分に宜しいと、殊《こと》の外《ほか》お悦びでお食《しょく》も余程進むような事で」
大「大夫、何ぞお慰《なぐさ》みを」
數「いや私《わし》は誠に武骨な男で、音曲《おんぎょく》や何かはとんと分らん、能が好きじゃ」
大「はア、左様でございますか、それでは能役者を」
數「いや連れて来たよ、二人次の間に居《お》るが、せめて皷《つゞみ》ぐらいはなければなるまいと思って、婦人で皷を能《よ》く打つ者があって、幸いだから、私《わし》が其の婦人《おんな》を連れてまいった」
大「それは少しも心得ませんでした、何時《いつ》の間《ま》にまいりましたか」
數「芸者どもは少し端《はし》へ寄って居れ」
と是から灯《あかり》を増し折から月が皎々《こう/\》と差上《さしのぼ》りまして、前の泉水へ映じ、白萩《しろはぎ》は露を含んで月の光りできら/\いたして居《お》る中へ灯《あかり》を置きまして、此方《こちら》には芸者が並んで居りますから、何方《どちら》を見ても目移りが致しますような有様、今|襖《ふすま》を開けて出て来ましたは仙台平《せんだいひら》の袴《はかま》に黒の紋付でございます。其の頃だから半髪青
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