數「其の許《もと》は斯ういう事も中々|委《くわ》しい、私《わし》はとんと知らんが、石灯籠《いしどうろう》は余りなく、木の灯籠が多いの」
大「えゝ、これはその、野原のような景色を見せました心得でございましょうか」
數「あ成程、これは面白い/\……此処《こゝ》から上《あが》るのか、成程玄関の様子が面白く出来たの、入口《いりくち》かえ」
大「これからお上《あが》り遊ばしませ、お履物《はきもの》は私《わたくし》がしまい置きます」
數「これは好《よ》い席だ」
大「さゝ、是へどうぞ/\」
と松蔭が段々案内をいたし、座敷の床の前へ褥《しとね》を出し、烟草盆や何か手当が十分届いて居ります。
大「どうぞ此処《これ》へお坐りを願います」
數「余り好《よ》い月だによって、縁先で見るのが至極宜しい、これは妙だ、此の辺は一体隅田川の流れで……あれに見ゆるのは橋場の渡しの向うかえ、如何《いか》にも閑地《かんち》だから、斯ういう処は好いの、えゝ一寸《ちょいと》秋田屋をこれへ」
大「えゝ御家老これが当家の主人秋田屋清左衞門と申します、年来お屋敷へお出入を致すもので、染々《しみ/″\》未《いま》だお目通りは致しませ
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