は大妙薬である、斯《かゝ》る結構な物を毒とは何ういう理由《わけ》だ尤《もっと》も其の時に盜跖《とうせき》という大盗賊が手下に話すに、是《こ》れは好《よ》いものが出来た、戸の枢《くろゝ》に塗る時は音がせずに開《ひら》く、盗みに忍び入《い》るには妙である至極|宜《よ》い物であると申したそうだ、同じ水飴でも見る人によっては然《そ》う違う、拙者もお見舞いに差上る積りで態々白山前の飴屋源兵衞方から持参いたした此の水飴」
富「これは怪《け》しからん秋月の御老人に限って其様《そん》なことは無いと存じていたが、是は怪しからん、あなたは何うかなすったな」
喜「其の方こそ何うかして居《い》る、お咳のお助けになり、お養いになる水飴を」
富「ス……はてな」
 と心の中《うち》で川添富彌が忠義無二の秋月と思いの外《ほか》、上屋敷の家老寺島|或《あるい》は神原五郎治と与《くみ》して、水飴を上《かみ》へ勧めるかと思いましたから、顔色を変えてジリヽと膝を前へ進め。
富「相成りません」
紋「白痴《たわけ》……喜一郎あのような事を申す、余程|訝《おか》しい変になった」
喜「余程変に相成りましたな」
富「御老臣が献ずる水飴
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