を建てたいという心掛なので」
富「左様か、それで宜しい、もう帰れ/\……おゝ馳走をすると申したっけ、欺《だま》しちゃアならん、私《わし》は直《すぐ》に上《あが》るから」
 と川添富彌は急に支度をして御殿へ出ることになりました。御殿ではお夜詰《よづめ》の方々が次第/\にお疲れでございます。お医者は野村覺江《のむらかくえ》、藤村養庵《ふじむらようあん》という二人が控えて居ります。お夜詰には佐藤平馬、外村惣衞《とむらそうえ》と申してお少《ちい》さい時分からお附き申した御家来|中田千股《なかだちまた》、老女の喜瀬川《きせがわ》、お小姓|繁《しげる》などが交々《こも/″\》お薬を上《あげ》る、なれどもどっとお悪いのではない、床《とこ》の上に坐っておいでゞ、庭の景色を御覧遊ばしたり、千股がお枕元で軍書を読んだり、するをお聞きなさる。お熱の工合《ぐあい》でお悪くなると、ころりと横になる。甚《ひど》く寒い、もそっと掛けろよと御意があると、綿の厚い夜着《よぎ》を余計に掛けなければなりません。お大名様方は釣夜具だとか申しますが、それほど奢った訳ではない。お附の者も皆心配して居られます。いまだお年若で、今年
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