御存じさまで」
秋「是は殿様のお部屋お秋の方《かた》の父で、お屋敷へまいる事もあるで、存じて居《お》る、其の者に頼まれて、貴様が此処《こゝ》の婆に斑猫を捕《と》れと頼んだのか、薬に用いるなれば至極|道理《もっとも》の事だ……当家の主人は居《お》るの、一寸《ちょっと》こゝへ出てくれ」
嘉「はい」
秋「婆も一寸こゝへ」
婆「はい」
と両人とも秋月喜一郎の前へまいりました。
秋「お前方は何かえ、此の飴屋の源兵衞は前から懇意にいたして居《お》るものかえ、毎度此の飴屋方へも行《ゆ》き、源兵衞も度々《たび/\》此方《こちら》へ参るような事があるかえ」
嘉「いえなに私《わし》が処へお出でなすった事も何もない、私は御懇意にも何《なん》にもしませんが、婆が商いに出ました先でお目にかゝったのが初《はじま》り、それから頼まれましたんで、のうお母《っかあ》」
婆「はい、なに心易くも何とも無《ね》えので、お得意廻りに歩き、商いをしべえと思って籠を脊負《しょ》って出て、お前さま、谷中へかゝろうとする途《みち》で会ったゞね、それから斯ういう理由《わけ》だが婆、何うだかと云うから、ま詰らん小商《こあきな》いをするよ
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