能く丹誠して……早速《さっそく》此処《こゝ》へ呼ぶが宜《よ》い、庭へ通した方が宜かろう」
浪「はい」
と是から下男が案内して庭口へ廻しますと、飛石《とびいし》を伝ってひょこ/\と婆《ばあ》さまが籠を脊負って入って来ました。縁先の敷物の上に座蒲団を敷き、前の処へ烟草盆が出ている、秋月殿は黒手の細かい縞の黄八丈の単衣《ひとえ》に本献上の帯を締めて、下襦袢《したじゅばん》を着て居られました。誠にお堅い人でございます。目下の者にまで丁寧に、
秋「さア/\婆《ばゞあ》こゝへ来い/\」
婆「はい、誠に御無沙汰をしましてま今日《こんにち》はお庭へ通れとおっしゃって、此様《こん》なはア結構なお庭を見ることは容易にア出来ねえ事だから、ま遠慮申さねえばなんねえが、御遠慮申さずに見て、※[#「女+息」、第4水準2−5−70]《よめ》っ子や忰に話して聞かせべいと思って参《めえ》りました、皆様お変りもごぜえませんで」
秋「婆《ばゞ》ア丈夫だの、幾歳《いくつ》になるの」
婆「はい、六十八になりますよ」
秋「六十八、左様か、アハヽヽヽいやどうも達者だな田端だっけな」
婆「はい、田端でごぜえます」
秋「名は何という
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