目がポカリと毀れて居たから恟《びっく》り致しました。
千「おや……お皿が毀れて居ります」
長「それ見ろ、お父様《とっさま》御覧遊ばせ、此の通り未《ま》だ粘りが有ります此の糊で附着《くっつ》けて瞞《ごま》かそうとは太い奴では有りませんか」
千「いえ、先程大殿様がお検めになりました時には、決して毀れては居りません」
長「何う仕たって此の通り毀れて居るじゃアないか」
千「先刻《さっき》は何とも無くって、今毀れて居るのは何う云う訳でしょう」
作「成程斯う云う事があるから油断は出来ない、これ千代|毀《わ》りようも有ろうのに、ちょっと欠いたとか、罅《ひゞ》が入った位ならば、是れ迄の精勤の廉《かど》を以《もっ》て免《ゆる》すまいものでもないが、斯う大きく毀れては何うも免し難い、これ、何は居らんか、何や、何やでは分らん、おゝそれ/\辨藏《べんぞう》、手前はな、千代の受人の丹治という者の処へ直《すぐ》に行ってくれ、余り世間へぱっと知れん内に行ってくれ、千代が皿を毀したから証文通りに行うから、念のために届けると云って、早く行って来い」
辨「へえ」
 と辨藏は飛んで行って、此のことを気の毒そうに話をすると、
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