《おんな》は」
侍「そんな事は何うでも宜しいが、能《よ》く見ると乙《おつ》な女さ」
○「へえー、おい鐵、此方《こっち》へ寄れ、ちょいと見ると美《い》い女だが、能く見ると眇目《めっかち》で横っ面《つら》ばかり見た、あゝいう事があるが、矢張《やっぱり》其の質《たち》なんでしょう」
侍「足下《そっか》が喋ってばかり居っては拙者は話が出来ぬ」
○「じゃア黙ってますから一つやって下せえ」
侍「それから紙燭《しそく》を点《つ》けて出て来て、お武家さま斯様な人も通らん山中《やまなか》へ何うしてお出でなさいました、拙者は武術修業の身の上ゆえ、敢《あえ》て淋しい処を恐れはせぬが如何にも追々|夜《よ》は更けるし、雨は降って来る、誠に難渋いたすによって一泊願いたいと云うと、何事も行届《ゆきとゞ》きません、召上る物も何もございませんし、着せてお寐《ね》かし申す物もございません、それが御承知なれば見苦しけれども御遠慮なくお泊り遊ばせと、親切な女で汚い盥《たらい》へ谷水を汲んで来て、足をお洗いなさいというので足を洗いました」
○「へえー其の娘の親父か何かいましたろう」
侍「親父もいない、娘一人で」
○「へえー……
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