が出来ねえ、江戸子が山の雪を見ると驚いちまうが、飯を喰う時にずうと並んで膳が出ても、誰も碌に口をきかねえな」
鐵「そうよ、黙っていちゃア仕様がないから挨拶《えゝさつ》をして見よう」
○「えゝ」
鐵「挨拶《えゝさつ》をして見ようか」
○「しても宜《い》いが、きまりが悪いな」
鐵「えゝ御免ねえ……へえ……どうも何でごぜえやすな、お寒いことで」
△「はア」
鐵「お前《めえ》さん方は何ですかえ、相宿のお方でげすな」
△「はア」
鐵「何を云やアがる……がア/\って」
○「手前《てめえ》が何か云うからはアというのだ、宜《い》いじゃアねえか」
鐵「変だな、えゝゝ毎日《めえにち》膳が並ぶとお互《たげえ》に顔を見合せて、御飯《おまんま》を喰ってしまうと部屋へ入《へい》ってごろ/\寝るくれえの事で仕様がごぜえやせんな、夜になると退屈《てえくつ》で仕様が有りませんが、なんですかえお前《まえ》さん方は何処《どこ》かえお出でなすったんでげすかえ」
△「私《わし》はその大和路の者であるが、少し仔細あって、えゝ長らく江戸表にいたが、故郷《こきょう》忘《ぼう》じ難《がた》く又帰りたくなって帰って来ました」
鐵「へえー
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