路の方が銭が要らん」
と御出家は奢《おご》らんから、寒くなってから木曾路を引返し本庄宿へまいりまして、婦人ではあるけれどもこれ/\の理由《わけ》だ、と役僧にお竹の身の上話をして、其の寺に一泊いたし、段々|日数《ひかず》を経てまいりましたが、元より貯え金は所持している事で、漸《ようや》く碓氷を越して軽井沢《かるいざわ》と申す宿《しゅく》へまいり、中島屋《なかじまや》という宿屋へ宿《やど》を取りましたは、十一月の五日でござります。
三十七
木曾街道でも追分《おいわけ》沓掛《くつがけ》軽井沢などは最も寒い所で、誰《たれ》やらの狂歌に、着て見れば綿がうすい(碓氷)か軽井沢ゆきたけ(雪竹)あって裾《すそ》の寒さよ、丁度碓氷の山の麓《ふもと》で、片方《かた/\》は浅間山の裾になって、ピイーという雪風で、暑中にまいりましても砂を飛《とば》し、随分|半纒《はんてん》でも着たいような日のある処で、恐ろしい寒い処へ泊りました。もう十一月になると彼《あ》の辺は雪でございます、初雪でも沢山降りますから、出立をすることが出来ません、詮方《せんかた》がないから逗留《とうりゅう》という事にな
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