、種々《いろ/\》先祖からの書附もあるが、先ず無事で私《わし》も安心した」
と正直な堅い人ゆえ、検めて道具棚へ載せて置きました。すると長助が座敷の掛物を片附けて、道具棚の方へ廻って参《ま》いりました。
長「お父《とっ》さま」
作「残らず仕舞ったか」
長「お軸物は皆仕舞いました」
作「客は皆道具を誉めたろう」
長「大層誉めました、此の位の名幅《めいふく》を所持している者は、此の国にゃア領主にも有るまいとの評判で、お客振りも甚《ひど》く宜しゅうございました」
作「皆良い道具が見たいから来るんだ、只呼んだって来るものか、権式振《けんしきぶ》ってゝ、併し土産も至極宜かったな」
長「はい、お父様《とっさま》、あの皿を今一応お検めを願います、野菊と白菊と両様共《りょうようとも》お検めを願います」
作「彼《あれ》は先刻《さっき》検めました」
長「お検めでございましょうが、少し訝《おか》しい事が有りますと云うは棚の脇に蒟蒻糊《こんにゃくのり》が板の上に溶いて有って、粘っていますから、何だか案じられます、他の品でありませんから、今一応検めましょうかね、秋《あき》、お前たちは其方《そちら》へ往《い》きな
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