親父も諦めべえ、色事になれや」
早「成れたって……成る手がゝりがねえ」
久「女に何とか云って見ろ」
早「間《ま》が悪くって云えねえ、客人だから、それに真面目な人だ、己《おら》が座敷へ入《へい》ると起上って、誠に長く厄介になって、お前には分けて世話になって、はア気の毒だなんて、中々お侍《さむらえ》さんの娘だけに怖《おっかね》えように、凛々《りゝ》しい人だよ」
久「口で云い難《にく》ければ文《ふみ》を書いてやれ、文をよ、袂《たもと》の中へ放り込むとか、枕の間へ挟《はさ》むとかして置けい、娘子《あまっこ》が読んで見て、宿屋の息子さんが然《そ》ういう心なれば嬉しいじゃアないか、どうせ行処《ゆきどこ》がないから、彼《あ》の人と夫婦になりてえと、先方《さき》で望んでいたら何うする」
早「何だか知んねえが、それはむずかしそうだ」
久「そんな事を云わずにやって見ろ」
早「ところが私《わし》は文《ふみ》い書《け》いた事がねえから、汝《われ》書いてくんろ、汝は鎮守様の地口行灯《じぐちあんどう》を拵《こしれ》えたが巧《うめ》えよ、それ何とかいう地口が有ったっけ、そう/\、案山子《かゝし》のところに何か居《い
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