然《そ》うすりゃア殺しませんか」
大「うん、只手前が悪い事をしたと云って、うん/\呻っていろ、何うして此処《こゝ》へ来たと聞いたら、実はお下屋敷の方へ参られませんから、此方《こちら》へ参ったのでございます、旅で種々《いろ/\》難行苦行をして、川を渉《わた》り雪に遇《あ》い、霙《みぞれ》に遭い風に梳《くしけず》り、実に難儀を致しましたのが身体へ当って、疝癪《せんしゃく》が起り、少しも歩けませんからお助け下さいましと云え、すると彼奴《あいつ》は正直だから本当に思って自分の家《うち》へ連れて行って、粥ぐらいは喰わしてくれるから、大きに有難う、お蔭さまで助かりましたと云うと、彼奴が屹度《きっと》己の処へ詫に来る、もし詫に来たら、彼《あれ》は使わん、怪《け》しからん奴だ、これ/\の奴だと手前の悪作妄作《あくざもくざ》を云ってぴったり断る」
有「へえ、それは詰《つまら》ねえ話で、其様《そん》な奴なら打殺《ぶっころ》してしまうってんで…」
大「いや/\大丈夫だ、まア聞け、とてもいかん/\という中《うち》に、段々|味《あじわ》いを附けて手前の善い所を云うんだ」
有「成程」
大「正直の人間……とも云えな
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