せんから、又巻納めて紙入の間へ挟んで寝ましたが、寝付かれません。其の内に離れて居りますけれども、宿泊人《とまりゅうど》の鼾《いびき》がぐう/\、往来も大分《だいぶ》静かになりますと、ボンボーン、ばら/\/\と簷《のき》へ当るのは霙《みぞれ》でも降って来たように寒くなり、襟元から風が入りますので、仰臥《あおむけ》に寝て居りますと、廊下をみしり/\抜足《ぬきあし》をして来る者があります。廊下伝いになっては居るが、締りが附いていて、別に人の来られないようになって居りますから、
梅「誰が来たろう、清藏ではあるまいか、何だろう」
と態《わざ》と睡《ねむ》った振で、ぐう/\と空鼾《そらいびき》をかいて居りますと、廊下の障子を密《そっ》と音のしないように開けて這込《はいこ》む者を梅三郎が細目を開《ひら》いて見ますると、面部を深く包んで、尻《しり》ッ端折《ぱしょり》を致しまして、廊下を這って来て、だん/″\行灯《あんどう》の許《もと》へ近づき、下からふっと灯《あかり》を消しました。漸々《だん/″\》探り寄って春部が仰臥《あおむ》けざまに寝ている鼻の上へ斯う手を当てゝ寝息を伺いました。
梅「す……はて
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