した御主人様が零落《おちぶ》れて出るのを見棄てゝは居《い》られません、何処《どこ》までもお供をして、倶《とも》に苦労をするのが主従の間だから、悪く思って下さるな」
 と説付《ときつ》けました。

        二十七

 段々訳を聞いても岩吉はまだ腑に落ちんので、
岩「主従はそれで宜かろうが、己を何うする」
忠「屋敷奉公をすりゃア斯ういう場合にはお供をするが当然《あたりまえ》さ、お前さんには済まないが忠義と孝行と両方は出来ません、忠孝|全《まった》からずというは此の事さ」
 岩吉にはまだ言葉の意味が分りませんから、怪訝《けゞん》な顔をして、
岩「何《なん》だア、忌《いや》に理窟を云やアがって、手前《てめえ》近《ちけ》え処じゃアなし、えおう五十里も百里もある処へ行くものを、まったからずって待たずに居《い》られるか」
忠「然《そ》うじゃアありません、忠義をすれば孝行が出来ないという事です」
岩「それは親に孝行主人に忠義をしろてえ事は己も知っている、講釈や何かで聞いたよ」
忠「それですから孝行と忠義と両方は出来ませんよ」
岩「出来ねえって……骨を折ってやんなよ」
忠「うふゝゝ骨を折ってやれ
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