ぬ御懇命《ごこんめい》を受けました、志摩などは誠にあゝいうお方様がと存じましたくらいで、へえどうか又何ぞ御用に立つ事がありましたら御遠慮なく……此処《こゝ》は役所の事ですから、小屋へ帰りまして仰せ聞けられますように」
祖「千万有難う」
 と仕方なく/\祖五郎は我《わが》小屋へ立帰って、急に諸道具を売払い、奉公人に暇《いとま》を出して、弥々《いよ/\》此処《こゝ》を立退《たちの》かんければなりません。何処《どこ》と云って便《たよ》って往《ゆ》く目途《あて》もございませんが、彼《か》の若江から春部の処へ送った文が残っていて、春部は家出をした廉《かど》はあるが、春部が父を殺す道理はない、はて分らん事で……確か梅三郎の乳母と云う者は信州の善光寺にいるという事を聞いたが、梅三郎に逢ったら少しは手掛りになる事もあろうと考えまして、前々《ぜん/\》勤めていた喜六という山出し男は、信州上田の在で、中《なか》の条村《じょうむら》にいるというから、それを訪ねてまいろうと心を決しまして、忠平という名の如く忠実な若党を呼びまして、
祖「忠平手前は些《ちっ》とも寝ないのう、ちょいと寝なよ」
忠「いえ眠くも何とも
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