た怪しげなる奴が、米藏の持った提灯をばっさり切って落す。
米「あっ」
と驚く、
織「何者だ、うぬ、狼藉《ろうぜき》……」
と後《あと》へ退《さが》るところを藪蔭からプツーリ繰出した槍先にて、渡邊の肋《ひばら》を深く突く
織「ムヽーン」
と倒れて起上ろうとする所を、早く大刀の柄《つか》に手をかけると見えましたが抜打《ぬきうち》に織江の肩先深く切付けたから堪りません。
織「ウヽーム」
と残念ながら大刀の柄へ手を掛けたまゝ息は絶えました。
二十三
渡邊織江が殺されましたのは、夜《よ》の子刻《こゝのつ》少々前で、丁度同じ時刻に彼《か》の春部梅三郎が若江というお小姓の手を引《ひい》て屋敷を駈落致しました。昔は不義はお家の御法度《ごはっと》などと云ってお手打になるような事がございました。そんならと申して殿様がお堅いかと思いますと、殿様の方にはお召使が幾人《いくたり》もあって、何か月に六斎《ろくさい》ずつ交《かわ》る/″\お勤めがあるなどという権妻《ごんさい》を置散《おきちら》かして居ながら、家来が不義を致しますと手打にいたさんければならんとは、ちと無理なお話でございま
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