しゅうございます」
大「なに嬉しくはあるまい……なに……真に手前嬉しいと思うなら、己に起請《きしょう》を書いてくれ」
菊「貴方、御冗談ばかり御意遊ばします、起請なんてえ物を私《わたくし》は書いた事はございませんから、何う書くものか存じません」
大「いやさ己の気休めと思って書いてくれ、否《いや》でもあろうが其《そ》れを持っておれば、菊は斯ういう心である、末々《すえ/″\》まで己のものと安心をするような姿で、それが情だの、迷ったの、笑ってくれるな」
菊「いゝえ、笑うどころではございませんが、起請などはお止し遊ばせ」
大「ウヽム書けんと云うのか、それじゃア手前の心が疑われるの」
菊「だって私《わたくし》は何もお隠し申すことはありませんし、起請などを書かんでも……」
大「いや反古《ほご》になっても心嬉しいから書いてくれ、硯箱《すゞりばこ》をこれへ……それ書いてくれ、文面は教えてやる……書かんというと手前の心が疑《うたぐ》られる、何か手前の心に隠している事が有ろう、然《そ》うでなければ早く書いてくれ」
菊「はい……」
 とお菊は最前大藏が飴屋の亭主を呼んで、神原四郎治との密談を立聞《たちぎゝ》を
前へ 次へ
全470ページ中175ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング