就《つい》ては上《かみ》がお逝去《かくれ》になれば、貴様も知っての通り奥方もお逝去で、御順《ごじゅん》にまいれば若様をというのだが、まだ御幼年、取ってお四歳《よっつ》である、余りお稚《ちい》さ過ぎる、併《しか》しお胤《たね》だから御家督御相続も仔細はないが、此の事に就て其の方に頼む事があるのだ、お家のため且《かつ》容易ならん事であるから、必ず他言をせん、何《ど》の様な事でもお家のためには御意《ぎょい》を背《そむ》きますまい、という決心を承知せん中《うち》は話も出来ん、此の事に就いては御家老を始め、こゝにござる神原氏我々に至るまで皆血判がしてある、其の方も何ういう事があっても他言はせん、御意に背くまいという確《しか》とした証拠に、是へ血判をいたせ」
源「へえ血判と申しますは何ういたしますので」
大「血で判をするから血判だ」
源「えゝ、それは御免を蒙《こうむ》ります、中々町人に腹などが切れるものではございません」
大「いや、腹を切ってくれろというのではない」
源「でも私《わたくし》は見た事がございます、早野勘平《はやのかんぺい》が血判をいたす時、臓腑を引出しましたが、あれは中々町人には」
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