に供えたる作り物語りとは思われざるなり。蓋し当時某藩に起りたる御家騒動に基き、之を潤飾敷衍せしものにて、其人名等の世に知られざるは、憚る所あって故らに仮設せるに因るならん、読者以て如何とす。
  明治二十四年十一月
[#地から3字上げ]春濤居士識
[#改ページ]

        一

 美作国《みまさかのくに》粂郡《くめごおり》に皿山という山があります。美作や粂の皿山皿ほどの眼《まなこ》で見ても見のこした山、という狂歌がある。その皿山の根方《ねがた》に皿塚ともいい小皿山ともいう、こんもり高い処がある。その謂《いわ》れを尋ねると、昔|南粂郡《みなみくめごおり》の東山村《ひがしやまむら》という処に、東山作左衞門《ひがしやまさくざえもん》と申す郷士《ごうし》がありました。頗《すこぶ》る豪家《ごうか》でありますが、奉公人は余り沢山使いません。此の人の先祖は東山将軍|義政《よしまさ》に事《つか》えて、東山という苗字を貰ったという旧家であります。其の家に東山公から拝領の皿が三十枚あります。今九枚残っているのが、肥後《ひご》の熊本の本願寺支配の長峰山《ちょうほうざん》随正寺《ずいしょうじ》という寺
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