梅三郎貴様は大藏のため既に罪に陥《おと》されし廉《かど》もあり、祖五郎は未《いま》だ年若じゃによって助太刀を致してやれ、これに岩越という柔術取《やわらとりtの名人が居《お》るから心配は無い、貴様力を添えてやれ、さ松蔭書付を書いて私《わし》へ出せばそれで手前はお暇になったのだ…秋田屋の亭主気の毒だが此の庭で敵討《かたきうち》を致させるから少し貸せ」
清「へえ」
と驚きました。
清「泉水がございますが」
數「いや、びちゃ/\落《おっ》こっても宜しい、急に一時《いちじ》に片を附けなければならんのだ、さ書け書かんかえ」
大「はっ……併《しか》し何《ど》の様《よう》の証拠がござって、手前は神原兄弟と心を合せて御家老職を欺《あざむ》き、剰《あまつ》さえ御舎弟様を手前が毒害いたそうなどと、毛頭身に覚えない事で、殊に渡邊織江を殺害《せつがい》いたしたなどと」
梅「黙れ此の梅三郎が宜く心得て居《お》るぞ、手前は神原と心を合せて織江殿を殺害《せつがい》致した其の時に、此の梅三郎は其の場に居合せ、下男を取押えて密書を奪い現に所持いたして居《お》る、最早|遁《のが》れる道はないぞ」
祖五郎は血眼《ちまなこ》になって前へ進み、
祖「やい大藏、人非人恩知らず、狗畜生《いぬちくしょう》、やい手前はな父を討ったに相違ない、手前は召使《めしつかい》の菊を殺し、又家来林藏も斬殺《きりころ》し、其の上ならず不義密通だと云って宿《やど》へ死骸を下げたが、其の前々《まえ/\》菊が悪事の段々を細かに書いて、小袖の襟へ縫附けて親元へ贈った菊の書付けを所持して居《お》る、最早|遁《のが》れる道はないぞ、手前も武士じゃないか、尋常に立上って勝負いたせ」
大「はっ……不忠不義の大罪重々心に恥じ、恐入りましてござる」
數「さ、書け、もう迚《とて》もいかんから書け、松蔭手前も諦めの悪い男だ、最早|遁《にぐ》るも引くも出来やせん、書け」
大「はっ」
數「まだ恐れ入らんか」
大「はっ」
數「も一つ云おうか、白山前の飴屋小金屋源兵衞を欺《だま》し宗庵という医者を抱込んで、水飴の中へ斑猫を煮込み、紋之丞様へ差上げようと致したな、それは疾《と》うに水飴屋の亭主が残らず白状致してある、遁《のが》れる道はない」
大「あゝ残念…是まで十分|仕遂《しおわ》せたる事が破れたか、あゝ」
と震《ふる》えて袴《はかま》の間へ手を入れ、松蔭大
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