処《こゝ》まで来たことか、私の事を案じて忠平が迷って私を救い出すことか、ひょっとしたら私が気を落している所へ附込んで、狐《きつね》狸《たぬき》が化《ばか》すのではないか、もし化されて此様《こん》な処へ来やアしないかと、茫然として墓場へ立止って居りました。
三十五
此方《こなた》は例の早四郎が待ちに待った今宵《こよい》と、人の寝静《ねしずま》るを窺《うかご》うてお竹の座敷へやって参り、
早「眠《ねぶ》ったかね/\、お客さん眠ったかえ……居ねえか……約束だから来ただ、※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]《かや》の中へ入《ひえ》っても宜《え》いかえ入《ひえ》るよ、入っても宜いかえ」
と理不尽に※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]《かや》を捲《まく》って中へ入り。
早「眠《ねぶ》ったか……あれやア居ねえわ、何処《どけ》え行っただな、私《わし》が来る事を知っているから逃げたか、それとも小便垂れえ行ったかな、ア小便垂れえ行ったんだ、逃げたって女一人で淋しい道中は出来ねえからな、私《わし》ア此の床の中へ入《ひえ》って頭から掻巻《けえまき》を被《かぶ》って、ウフヽヽ屈《つく》なんでると、女子《おなご》は知んねえからこけえ来る、中へお入《ひえ》んなさいましと云ったところで、男が先へ入《ひえ》っていりゃア間《ま》を悪がって入《ひえ》れめえから、小《ちっ》さくなってると、誰もいねえと思ってすっと入《ひえ》って来ると、己《おら》アこゝにいたよって手を押《つか》めえて引入れると、お前《めえ》来ねえかと思ったよ、なに己ア本当に是まで苦労をしたゞもの、だから中《なけ》え入《ひえ》るが宜《え》い、入《ひえ》っても宜《え》いかえと引張込《ふっぱりこ》めば、其の心があっても未《ま》だ年い行かないから間を悪がるだ、屹度《きっと》然《そ》うだ、こりゃア息い屏《こら》して眠《ねぶ》った真似えしてくれべえ」
と止せば宜《い》いのに早四郎はお竹の寝床の中で息を屏《こら》して居りました。暫《しばら》く経《た》つと密《そっ》と抜足《ぬきあし》をして廊下をみしり/\と来る者があります。古い家《うち》だから何《どん》なに密と歩いても足音が聞えます、早四郎は床の内で来たなと思っていますと、密と障子を開け、スウー。早四郎は障子を開けたなと思っていますと、ぷつり/\と、吊ってありました※[#
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