死のうというのですから寝ても寝られません。種々《いろ/\》に思返《おもいかえ》して見たが、死神に取付かれたと見えまして、思い止ることが出来ません。其の内に夜《よ》も段々更けて世間が寂《しん》として来ましたから、時刻はよしと二人はそっと出まして、牛屋の雁木へ参りますと、暮の事でございますから吾妻橋の橋の上には提灯《ちょうちん》がチラリ/\見えます。
村「友さん」
友「えゝ」
村「まだ吾妻橋を提灯が通るよ」
友「余程《よっぽど》更けた積りだが、そうでもなかったか」
村「これから二人で行《ゆ》くのだが、私も今日昼過から家《うち》を出たから屹度《きっと》お母《っかあ》が捜しているに違いない、若《も》し人目に懸って引戻されるともう逢う事は出来ないから、迂濶《うっかり》とは行かれないから、此の牛屋の雁木からでいゝから飛込んでおくれな」
友「此処《こゝ》はねえ浪除杭《なみよけぐい》が打ってあって、杭の内は浅いから外へ飛込まなければならんが飛べるかえ」
村「飛べますよ、一生懸命に飛込みますから」
友「浪除杭の外は極《ごく》深い所だ」
村「じゃア、さア此処から飛込みましょう、お前さん一
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