襖《ふすま》を明けて女中が見えました。
 女「お銚子がお熱くなりました、誠に大層お静かでございます…お酌を致しましょう」
 友「はい願いましょう、毎度御厄介を掛け、世話をやかしてお気の毒さま、もう私もこれぎり来られまい、遠方へ行《ゆ》きますから、姉さんの顔も是が見納めでしょう」
 女「まア厭でございますねえ、そんな事を仰しゃると心細うございますよ、此の間も久しいお馴染になったお客様がお役で御遠方へお出《いで》になるゆえ、お送り申して胸が一ぱいになりました、いけませんねえ、お村姉さんは度々《たび/\》お客様をお連れ下すって、柳橋にはお村さんより外《ほか》に好《よ》い芸者|衆《しゅ》は無いと宅《うち》のお内儀《かみさん》も云って居りました、お村さんいけませんねえ」
 村「私も一緒に行《ゆ》くような事になりました」
 女「羨《うらや》ましい事ねえ、結句どんな所でも思う人と行っていれば辛いと思うものでございませんよ」
 友「これはほんの心ばかりだが、どうぞ親方とお内儀に上げて下さい、これは女中|衆《しゅ》八人へ、これは男|衆《しゅ》へ、たしか出前持とも六人でしたねえ」
 女「毎度どうも、御心配
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