重《ひとえ》を着るばかりで、お月の顔を見てにこりと笑いながら、ジロリと見る顔色《かおいろ》は遠山《えんざん》の眉《まゆ》翠《みどり》を増し、桃李《とうり》の唇《くちびる》匂《にお》やかなる、実に嬋妍《せんけん》と艶《たお》やかにして沈魚落雁《ちんぎょらくがん》羞月閉花《しゅうげつへいか》という姿に、女ながらもお月は手を突いてお村の顔に見惚《みと》れる程でございます。
村「姉さんお出《いで》なはい」
月「お村はん、今お母《っか》はんに三浦屋の御舎さんの事を話したのだが、諾《うん》とさえ云えば大した事になるのだよ、嘸《さぞ》此間《こないだ》からお前に種々《いろ/\》な事を云うだろうね」
村「あゝ、来るたんびに変な事を云って困るよ」
月「私にも種々云ってしょうがないから、騙《だま》かして云い延べて置いたが、責《せめ》られてしょうがないよ」
さ「お村や、諾《うん》とお云いよ、有難い事だ、姉さんが何とか、日光《にっこう》御社参《ごしゃさん》とかいうお方が妾になれと仰しゃるのは有り難い事だから、諾とお云いよ」
村「姉はん、それは男も醜くはなし綺麗なような人だが、何だか私は虫が好かない、
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