年がいかねえから、時々|跣足《はだし》でお座敷から駈け出して帰って来たりするから、何《なん》とかお思いかと心配してるのサ」
 月「お母《っか》さんは何時《いつ》も壮健《たっしゃ》だねえ」
 さ「えゝ私《あたし》ア是まで寸白《すばく》を知りませんよ、それに此間《こないだ》は又結構なお香物《こう/\》をくだすって有難うございました、あれさ、お重ねよう」
 月「お母さん、あのお村はんは居《い》るかえ」
 さ「あゝ今二階で化粧《みじめえ》して居《お》りますの、どうせ閑暇《ひま》だが又|何時《いつ》口が掛るかも知れないから、湯に遣《や》って化粧《けしょう》をさせて置くのサ……二階に居りますが何か用が有るのかえ」
 月「そうかえ、少しお村はんの事に就《つ》いて話があるんだが、あの三浦屋から十二三度呼びによこした本所割下水の剣術の先生の御舎弟《ごしゃてい》さんだというから、御舎さん/\という人は、取巻《とりまき》が能《よ》くって金が有るので、一寸様子が好《い》いから、浮気な芸者は岡惚れをするくらいだが、彼《あ》の人がお村はんに大変惚れてゝ、私にお月取持ってくれ/\と種々《いろ/\》云うから、私があの
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