の上へ黒縮緬《くろちりめん》の羽織を引ッかけ、糠袋に手拭を持ってお村の宅《うち》の門口へ立ちまして、
 つき「お村はん在宅《うち》かえ」
 さき「おやおつき姉さん、まアお入りよ、あれさお入りよ、湯かえ、いゝじゃないか、種々《いろ/\》お前さんにお礼の云いたい事もあるから一寸《ちょっと》お入りよ」
 月「寒いじゃないか、お母《っか》さん、御無沙汰をしました」
 さ「お寒くなりました、段々|押詰《おしつま》って来るから何《なん》だか寒さがめっきり身に染《し》みますよ、今一杯始めた処サ」
 月「朝からお酒で大層景気が好《い》い事ねえ」
 さ「一つお上りなはいな」
 月「昨宵《ゆうべ》ね少し飲過ぎてお客のお帰んなすったのも知らないくらいに酔い潰《つぶ》れたが、例《いつも》のきまりだから仕方がない」
 さ「失礼だが一杯お上りよ、私がお酌をするよ、本当に姉さんはお村を彼此《かれこれ》云ってくださるから有難い事だって、平常《ふだん》そう云っているのだよ、何《なん》でも姉さんの云う事を肯《き》かなけりゃいけねえって、そう云っているのだから、何事も差図をしてお貰い申す積りさ、何《なん》てっても未《ま》だ
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