ですから、手前へお免じください、暫くお待ちください、まア/\」
と後《うしろ》から押しまする。和田原八十兵衞は長いのを振上げたなり、
八十「邪魔致すな其処《そこ》放せ」
と云いながらこちらを振り向うとすると、ギュッと手を逆に捻《ねじ》る、七人力も有ります人に苛《ひど》く利き処を押えられ、痛くて向く事が出来ませんから、又|左方《こちら》へ向うとすると、右へ捻りまするから八十兵衞は右と左へぐる/\して居ります。文治郎は、
文「暫く/\」
といいながら狭い路地を押し出して、表へ連れて参りました。後《あと》には娘お町が有難いお人だと悦んで居りました。國藏は又|頻《しき》りに心配して、ぐる/\駈廻《かけまわ》って居りまする処へ文治郎が立帰《たちかえ》って参り、
文「先《ま》ずお怪我がなくてお目出とうございました」
町「おや、あなたは先程の文治郎さま、未《ま》だお帰りにはなりませんでしたか」
文「御同長家《ごどうながや》の内に懇意な者が居りますので、おゝこれ此処《こゝ》に居ります此の國藏の宅に今まで居りました処、此の騒ぎ、怪《け》しからん奴でございましたなア」
町「お父様《とっさ
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