借金方へ填《う》めて精出し、働らいて儲《もう》けた銭で買った着物を着て往かなけりゃアならねえと思って居りやす、旦那え不思議なことにゃアお浪が此の頃|神信心《かみしんじん》を始めやした、彼奴《あいつ》は男を七人殺しやした奴ですぜ、それが手で殺すのじゃアねえのさ、皆《みんな》口で欺《だま》して殺すというのは、欺された男が身を投げたり首を縊《くゝ》ったりしやしたのさ、そう云う奴が観音様を拝むようになったから、観音様を拝んでも御利益《ごりやく》があるものか、それよりも首を継いでもらった旦那を拝めってなアお浪、あ、今彼奴は蕎麦屋へ行ったっけ」
文「そりゃア悦ばしいのう、己《おれ》の云うことを聞いて手前が改心すれば、彼《あ》の時打擲したことは文治郎が詫るぞ」
國「勿体《もってえ》ねえことをお云いなさる、此間《こないだ》親父の墓場へ往って石塔へ向って、業平橋の旦那のお蔭でお前《めえ》の下へ入《へい》れるようになったよと云ったが、親父も草葉の蔭で安心しましたろうと思いますのさ」
文「これは誠に少しばかりだが、家見舞だから取って置いてくれ」
國「旦那こんなことをなすッちゃアいけねえやね」
文「
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