手前の身祝いだから取って置いてくれ」
國「あれサ、これを戴くと身を苦しめねえで貰った銭だから、折角戴いても軍鶏鍋《しゃもなべ》でも食って寝て仕舞ったり何かして為にならねえから止《よ》しておくんなせえ」
文「それはそうだろうが、これは己《おれ》の志だから受けてくれ、また炭|薪《まき》や何か入用《いりよう》ならいつでも取りに来るがいゝよ」
國「有難うございます」
と云われ文治も嬉しく思って居りますと、その内蕎麦が参りましたから馳走《ちそう》になって、四方山《よもやま》の話をして居りますと、一軒置いて隣りの小野庄左衞門の所へ秋田穗庵が剣術遣いを連れて来て、
秋「さアこれへ/\」
町「お父様《とっさま》又穗庵様が入っしゃいましたよ」
庄「よく来るな、蒼蠅《うるさ》いなア」
秋「先刻は誠に失敬を申して相済みません、あれから帰りがけに割下水の先生の所へ寄りますと、大呵《おおしか》られ、貴様の云いようが悪いから出来る縁談も破談になる、只《た》った一人の御息女を妾手掛に欲《ほし》いと云うから御立腹なすったのだ、此方《こちら》では御新造《ごしんぞ》に貰い受けたいのだ、御縁組を願いたいのだ
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