のだ、然《しか》るに手前は仲人《ちゅうにん》のくせに頭巾を被って居《お》るとは失礼な奴だ、頭巾を取れ」
文「お前さんが頭巾を取って宜しかろう、仲人が来《きた》らば先《ま》ず其方《そっち》から頭巾を取って斯様々々な訳で有るからと話をすれば、仲人も頭巾を取るが、喧嘩の当人の方で被っているから仲人の方でも被っているのは当然《あたりまえ》だ」
士「不届至極な奴だ、素町人を切るより此奴《こやつ》を切ろう」
士「それが宜しい」
文「これは面白い、私《わし》を代りに切って此の両人を助けて呉れゝば切られましょう、さア/\田舎のお方、早く行《ゆ》きなさい/\」
と云うと生酔《なまよい》も酔が覚め、腰が抜けて迯《に》げる事が出来ませんで、這《は》いながら板塀の側に慄《ふる》えておりますと、剣術遣いはジリ/\ッと詰寄って参ったから、文治は油断をしませんでプツリッと長脇差の鯉口《こいぐち》を切って、
文「さア代りに切られますが、今の両人と違って切るのは些《ちっ》とお骨が折れましょう、手が二本足が二本あって動きますから気を付けて切らんと貴方《あなた》の方の首が落ちましょう」
士「やア此奴《こいつ》
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