」
と云うから見ると士《さむらい》だから慌てゝ除《よ》けようと思うと、除ける機《はずみ》にヒョロ/\と顛《ころが》ります途端に、下駄の歯で雪と泥を蹴上《はねあ》げますと、前の剣術遣いの襟《えり》の中へ雪の塊が飛込みましたから、
士「あゝ冷たい、なんたる奴だ、あゝ冷たい/\、これ町人倒れたぎりで詫を致さんな、無礼至極な奴だ、何《なん》と心得る、返答致せ」
と云われ漸《ようや》く頭を挙げて向うを見てもドロンケンだから分りません。
商「誠に大変酔いまして、エー何《なん》とも重々恐れ入りやした、田舎者で始めて江戸へ参《めえ》りやして、亀井戸へ参詣して巴屋で一|杯《ぺい》傾けやした処が、料理が佳《い》いので飲過ぎて大酩酊《おおめいてい》を致し、足元の定《さだま》らぬ処から無礼を致しやして申し訳がありやせん、どうか御勘弁を願いやす」
士「なんだ言訳に事を欠いて巴屋でやり過ぎたとはなんだ」
商「些《ち》とやり過ぎやした、どうも巴屋はなか/\旨く食わせやすなア」
士「言訳をするのに巴屋はなか/\旨く食わせるなどとは不埓《ふらち》な申分《もうしぶん》、やい其処《そこ》に転がっているのは供か
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