いのばかり賞《ほ》めているが、顔色容貌《かおかたち》ばかりではない、親に孝行をすると云う心掛が善《い》いなア」
森「そうですなア、心がけがいゝねえ」
文「どうも屋敷育ちは違うなア」
森「屋敷育ちは違いますなア」
文「金も受けない所がえらい」
森「金を受けないところがえらい」
文「感心だ」
森「感心だ」
文「同じ事ばかり云うな」
と話をしながら橋を渡って来ると、向うから前橋《まえばし》竪町《たつまち》の商人《あきんど》が江戸へ商用で出て来て、其の晩|亀戸《かめいど》の巴屋《ともえや》で友達と一緒に一杯飲んで、折《おり》を下げていたが酔っているから振り落して仕舞って、九五縄《くごなわ》ばかり提げ、相合傘《あい/\がさ》で踉《よろ》けながら雪道の踏堅めた所ばかり歩いて来ますが、ヒョロリ/\として彼方《あっち》へ寄ったり此方《こっち》へ寄ったり、ちょうど橋詰まで来ると、此方から参ったのは剣術|遣《つか》いのお弟子と見えて奴《やっこ》蛇《じゃ》の目《め》の傘をさして来ましたが、其の頃町人と見ると苛《ひど》い目に合わせます者で、
士「さア除《ど》け/\素町人《すちょうにん》除け
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