殊《こと》に見ず知らずの者に四十金恵んで下さるとは何たる慈悲深い人だろうと、我を忘れて惚れ/″\と見惚《みとれ》て居りまして、思わず知らず菓子の包みをバタリッと下に落しました。
森「姐《ねえ》さん落しちゃアいけねえぜ、折角お呉れなすッたのだから」
娘「はい」
と云って羞かしいから真赤になって立上るを、
文「姉さん、帰るんならどうせ通道《とおりみち》だから送って上げよう、大きに御厄介《ごやっかい》になりました、明日《あした》来て奉公人や何かへ詫《わび》をしましょう」
亭「どう致しまして、明日《みょうにち》またお母様《っかさま》へお肴を上げますから」
文、森「左様なら」
と娘と連れ立って松倉町の角《かど》まで来ました。
娘「有難うございます」
文「それでは明日《あした》往《ゆ》きますよ」
娘「有り難うございます/\」
と云って幾度も跡を振り返って見ますのは、礼が云いたいばかりではない、文治の顔が見たいからでございます。
娘「有り難うございます/\」
と云いながら曲り角などはグル/\廻りながら礼を云いますから、
森「旦那|美《い》い女ですなア」
文「貴様は女の美
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