してあります、浮田金太夫様からのお手紙が参って居ります」
文「じゃア全く居《お》らぬか……残念な事を致したな、大伴兄弟が居《お》ると思ったに蟠龍軒だけ築地の屋敷へ参ったか……あゝ残念な事をした」
と云いながらプツーリと癇癪紛れに下男の首を討落《うちおと》しました。奉公人はいゝ面の皮で、悪い所へ奉公をすると此様《こん》な目に遇います。文治郎は刀をさげ、隠れて居《お》るかと戸棚《とだな》を開けたり、押入を引開けて見たが、居りません。座敷の真中《まんなか》に投《ほう》り出してありますは結構な脇差で、只《と》見ると赤銅七子に金の三羽千鳥の縁頭、はてなと取上げて見ると、鍔は金家の作、目貫は三羽千鳥、是は彼《か》のお茶の水で失ったる彦四郎貞宗ではないか、中身はと抜いて見ると紛《まご》う方なき貞宗だから、あゝ残念な事をした庄左衞門を殺害《せつがい》したのは彼等兄弟の所業《しわざ》に相違ないが、是を己が持って帰れば盗賊に陥り、言訳が付かぬ、却《かえ》って刀は此所《こゝ》に置く方が調べの手懸りにもなろうと思い、此の事を早くお町にも話したいと血《のり》を拭《ぬぐ》って鞘に納め、塀を乗越えて立帰りました
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