したかとお村をズタ/\に斬り、汝《われ》は此の口で文治郎に悪口を吐《つ》いたかと嬲殺《なぶりごろ》しにして、其の儘脇差を投《ほう》り出し、藤四郎吉光の一刀を提《さ》げて「蟠龍軒は何処《どこ》に居《お》るか、隠れずに出ろ、友之助になり代って己が斬るから此処《こゝ》へ出ろ」と云いながら何処を探してもいないから、台所へ来て男部屋を開けますると、紙帳《しちょう》の中へゴソ/\と潜《もぐ》って、頭の上へ手を上げて一生懸命に拝んで、
男「何卒《どうぞ》お助け下さい、何も心得ません、命|計《ばか》りはお助けなすって、御入用なれば何《なん》でも差上げます」
文「己は賊ではない、汝《てまえ》は奉公人か、当家の家来か」
男「へえ先月奉公に這入った何も心得ませんもので」
文「蟠龍軒は何処に隠れて居《お》るかそれを教えろ、蟠龍軒は何処に隠れて居るかそれを言え」
男「何処だか存じませんが、今朝程|築地《つきじ》のお屋敷へ往って浮田金太夫《うきたきんだゆう》様の処へ、竹次郎というお弟子と今一人を連れて参りました」
文「嘘を云え、何処に隠れているか云え」
男「嘘ではございません、主人の煙草盆に手紙が挿
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