女房だ、宜しい、私《わし》が附いていて、探《さが》し当て屹度《きっと》討たせます、仮令《たとえ》今晩|為終《しおお》せて来ようとも、窃《ひそ》かに立帰ってお前の親の讐を討ったる上で名告《なの》って出ても宜《い》い……併《しか》し直ぐと手掛りもなかろう、彦四郎の刀を取られたのを手掛りとしても、それさえ他《た》に類のあるものでもあり、脇差の拵《こしら》えや何かも女のことだから知るまい」
 町「いゝえ、親父《おやじ》が自慢に人様が来ると常々見せましたが、縁頭《ふちがしら》は赤銅七子《しゃくどうなゝこ》に金の三羽千鳥が附きまして、目貫《めぬき》も金の三羽千鳥、これは後藤宗乘の作で出来の好《よ》いのだそうで、鰐《さめ》はチャンパン、柄糸《つかいと》は濃茶《こいちゃ》でございます、鍔《つば》は伏見の金家《かねいえ》の作で山水に釣《つり》をして居《お》る人物が出て居ります、鞘は蝋色《ろいろ》でございまして、小柄《こづか》は浪人中困りまして払いましたが、中身は彦四郎貞宗でございます」
 文「能く覚えて居《お》る、それが手掛りになりますから心配せぬが宜しい、屹度《きっと》敵《かたき》を討たせましょうが…
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