き身の上で後家を立てるようなことがあっては如何《いか》にも気の毒、私《わし》が死んでお母様がお前に養子なさると云えば、一旦文治郎の女房になったと他人《ひと》は思おうとも、お前の身に私《わし》と添臥《そえぶし》をせぬと云う心に力があるから、どのような養子も出来る、添寝をせぬのは実は文治郎がお前を思う故に、情《なさけ》の心からだ、又首尾|能《よ》く為終《しおお》した上では、縁あって来た者故添い遂げらるゝこともあろうかと考える、何事も右京太夫の家来の藤原と相談してお母様を頼む、何卒《どうぞ》情《つれ》ない男と思いなさるな、天下のため命を棄てるかも知れぬから」
 町「はい能く打明けて仰しゃって下すった」
 と袖《そで》を噛んだなりで泣き倒れましたが、暫くあって漸々《よう/\》顔を上げまして、
 町「旦那様、そう云うことなら決してお止め申しませんが、何卒《どうぞ》私《わたくし》の申しますこともお聞き遊ばして下さいまし」
 文「何《なん》でも聞きます、どう云うこと」
 町「はい、私《わたくし》が此方《こちら》へ参りましてから、貴方はお癇癖が起って居《お》る御様子、寛々《ゆる/\》お話も出来ませんが
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