事でございますならばお母様に知れませぬように、どのようにも私《わたくし》が執《と》り繕いますから、其の女中をお部屋までお呼び遊ばすようになすって下されば、お母様に知れないよう計《はから》います、実は斯うと打明けて御意《ぎょい》遊ばして下さる方が却《かえ》って私《わたくし》は有難いと存じます」
 文「つまらぬことを云うね、妾や手掛の所へ行《ゆ》くに鎖帷子を着て行《ゆ》く者はありません、併《しか》しお前が来てから盃をしたばかりで一度も添寝《そいね》をせぬから、それで嫌うのだと思いなさるだろうが、なか/\左様な女狂いなどをして家を明けるような人間ではございません、言うに云われぬ深い理由《わけ》があって、どうも棄て置かれぬ、お前が左様に疑《うた》ぐるから話すが、私は義に依《よ》って夜《よ》な/\忍び込んで、若し其の悪人を討てば、幾千人の人助けになる、天下のお為になる事もあろう、それ故に母に心配を掛けないよう隠して斯うやって参る、文治郎元より一命を抛《なげう》っても人の為だ、私《わし》がお前と一度でも添臥《そいぶし》すればお前はもう他《た》へ縁付くことは出来ぬ、十七八の若い者、生先《おいさき》永
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