、身を棄て、義を採ります。命を棄てゝも信を全くする其の志がどう云う所から起りましたか、文治郎は何か学問が横へ這入り過ぎた処があるのではないかと或る物識《ものしり》が仰しゃったことがございます、余り人の為の情《なさけ》と云うものが深くなると、人を害することがあります[#欄外に「玉葉集巻十八、雑五、従三位爲子」の校注あり]「心ひく方《かた》ばかりにてなべて世の人に情《なさけ》のある人ぞなき」と云う歌の通り「情《なさけ》を介《さしはさ》んで害を為《な》す」と云う古語がございます。大伴を討って衆人を助け、殊には友之助を欺いて女房を奪い、百両の金も取上げて仕舞い、彼を割下水の溝《どぶ》の中へ打込み、半殺しにしたは実に大逆非道な奴で、捨置かれぬと云う其の癇癖を耐《こら》え/\て六月の晦日《みそか》まで待ちました。昼の程から様子を聞くと、今日は大伴兄弟も他《た》へ用達《ようたし》に行《ゆ》くことなし、晦日のことで用もあるから払方《はらいかた》を済ませ、家《うち》で一杯飲むということを聞きましたから、今宵《こよい》こそ彼を討たんと、昼の中《うち》から徐々《そろ/\》身支度を致します。お町は其の様子を知
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