忠「へえ」
 蟠「便をしたいが、少し向うから人が来るようだから」
 忠「宜しゅうございます、私《わたくし》も出たいからお附合《つきあい》をしたい」
 蟠「左様《そう》か、そんなら私《わし》が提灯を持ってやろう」
 と元より貸提灯でございますから、
 蟠「ア、燈火《あか》りが消えるようだ」
 忠「消えましたか、困りましたな、一本道だから宜しいが燈火がなくては困りますな」
 蟠「うっかりしていた、困ったなア、何処《どこ》かへ往って借りよう、通り道に家《うち》があるだろう、構わず便《べん》をしなよ」
 忠「左様《そう》でございますか、宜しゅうございます」
 とうっかり向うを向いて便を達《た》そうとする処をシュウと抜討ちに胴腹《どうばら》を掛けて斬り、又|咽元《のどもと》を斬りましたから首が半分落るばかりになったのを、足下《そっか》に掛けてドブーンと溜り水の中に落して仕舞いました。懐中から小菊《こきく》を取出して鮮血《のり》を拭い、鞘に納め、折《おり》や提灯を投げて、エーイと鞍馬《くらま》の謡《うた》いをうたいながら悠々《ゆう/\》と割下水へ帰った。其の翌日文治郎が様子を見て大伴の道場へ
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