わし》が金座役人の所へ往って此の金は明日《あした》までに届けなければならぬ金だが、吉原へ行《ゆ》けば才覚が出来る、池田金太夫《いけだきんだゆう》という人を知っているだろう」
忠「河内守《かわちのかみ》の公用人の」
蟠「そうよ、内証《ないしょう》で遊びに往っている金太夫に遇うまで貴公は他《た》へ往って、赤い切れを掛けた女を抱いて寝て居《お》れば百金は才覚する」
忠「久しく遊びに参りませんよ、妻《さい》が歿して二年越し独身で居ります……参りたいな、金子を戴いて待っている間、赤い切れと寝ているなどは有難い」
蟠「金を早く持って帰らんでは市ヶ谷の親類の方はどうする」
忠「金を持って行《ゆ》けば明日《あした》でも宜しゅうございます」
蟠「現金な男だ、駕籠というのも何《なん》だからぶら/\歩こう」
と貸提灯《かしぢょうちん》を提げて雪駄穿きで、チャラリ/\と又兵衛橋《またべえばし》を渡って押上橋《おしあげばし》の処へ来ると、入樋《いりひ》の処へ一杯水が這入って居ります。向うの所は請地《うけじ》の田甫《たんぼ》でチラリ/\と農家の燈火《あかり》が見えます、真の闇夜《やみ》。
蟠「阿部
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