身代もよく、人も助け、其の上老母へ孝行を尽します。兎角《とかく》男達に孝子と云うは稀《まれ》なもので、成程男達では親孝行は出来ないだろう、自分の身を捨《すて》ても人を助けるというのであるから、親に対しては不孝になるだろうと仰しゃった方がありましたが、文治は人に頼まれる時は白刃《しらは》の中へも飛び込んで双方を和《なだ》め、黒白《こくびゃく》を付けて穏便《おんびん》の計《はから》いを致しまする勇気のある者ですが、母に心配をさせぬため喧嘩のけの字も申しませず、孝行を尽して優しくする処は娘子《むすめっこ》の岡惚れをするような美男でございますが、怒《いか》ると鬼をも挫《ひし》ぐという剛勇で、突然《いきなり》まかな[#「まかな」に傍点]の國藏の胸ぐらをとりまして奥の小間に引摺り込み、襖《ふすま》をピッタリと建《た》って國藏の胸ぐらを逆に捻《ねじ》って動かさず、
 文「やい國藏、汝《われ》は不届な奴である、これ能《よ》く承われ、手前《てめえ》も見た処は立派な男で、今盛りの年頃でありながら、心得違いをいたし、人の物を貪《むさぼ》り取り、強請騙りをして道に背き、それで良いものと思うか、官《かみ》の御法
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