敷様だア、紋付が能く似合う、頭の簪《かんざし》は山田屋か、損料は高《たけ》えが良《い》い物を持っているなア、これじゃアお母様《ふくろさま》の気に入らア、これから直《すぐ》に行《ゆ》きましょう」
 浪「あゝ貴嬢《あなた》そんな卑下したことを云わないで、嫁にすると云ったら嫁におなんなさいよ」
 國「手前《てめえ》一緒に行《い》きない」
 浪「わたしは衣服《きもの》も何もないもの、嫌《いや》だよ」
 國「手前《てめえ》はめかすには及ばねえ、行《い》け/\」
 これから連れて参りますと、森松は路地の処に待って居ります。
 森「兄《あに》い々々どうした、お嬢様はどうした」
 國「お嬢さまは此《こゝ》へ連れて来た」
 森「これか、こりゃアお母様《ふくろさま》に気に入らア」
 國「気に入るだろう」
 森「気に入らなければ殴る……旦那、藤原さんえ、来ましたよ」
 藤「何が」
 森「どうもその頭が」
 藤「頭が腫《は》れたか」
 森「腫れたのではありません嫁ッ御《ご》が来ましたよ」
 藤「これは/\」
 國「漸く支度が出来ました」
 藤「叔母も先程から楽《たのし》みにして待って居ります、さア此方《こっち
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