われてがっかり致しましたが、早稲田は遠路のことであるが、これから山の宿へ頼みに行《ゆ》くのは造作もない、此の次は来月二日であるかと云いながら、神楽坂《かぐらざか》まで来ると、車軸を流すようにざア/\と降出《ふりだ》して雨の止む気色《けしき》がございませんから、蕎麦屋《そばや》へ這入って蕎麦を一つ食べて凌《しの》いで居ります。夏の雨でございますから其の中《うち》晴れた様子、代を払って出て行《ゆ》きます。先へ探偵《いぬ》に廻ったのは篠崎竹次郎《しのざきたけじろう》という門弟でございます。此の竹次郎がお茶の水の二番河岸《にばんがし》へ参りますと、其の頃お茶の水はピッタリ人が通りません。
竹「先生々々」
「おー」と答えて二番河岸から上って来たのは大伴蟠龍軒、暑いのに頭巾を冠《かぶ》り、紺足袋雪駄穿きでございます。
蟠「竹、どうした、目腐れ親父はどうした」
竹「只今これへ参ります、今|牛込《うしごめ》の蕎麦屋から出ましたのを見届けました、水戸殿《みとどの》の前を通って参ります」
蟠「もう程《ほど》のう参るか」
竹「参ります」
蟠「手前先へ帰れ」
竹「宜しゅうございますか」
蟠「
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