に全快の上は筆耕を書いて戴きたい」
庄「有難いことで、唯薬を戴けば全快次第書いて上げるのは無論でございますが、どうか頂戴したいものでございます」
忠「これは家伝の薬で功能は立処《たちどころ》にある」
庄「どういう薬法でございますか」
忠「薬法、なんでございますな…」
どうも教わりたてゞございますから能く分りません、向うは盲人《めくら》だから書いた物を出して見ても宜しいが、娘が居りますから、
忠「姐《ねえ》さん、お気の毒でございますが水が飲みとうございますから、冷たいお冷水《ひや》を一杯戴きたいもので」
庄「これ水を上げるが宜しい」
娘が水を汲みに出て行《ゆ》きましたから、扇へ書いたのをそっと出して見まして、
忠「家法の薬は蘆膾丸と申しまして」
庄「ハー蘆膾丸と申しますか、どういうお書物に在《あ》りましたか」
忠「其の書物は明《あきら》かの樓《たかどの》いえなに明《みん》の樓英の著わした医学綱目という書物がある」
庄「医学綱目、成程一二度見たことがありました、はゝアどういうお薬でございますか」
忠「それはその七|味《み》あります、これは蘆膾丸というのです」
庄
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