》っしゃいました」
忠「小野庄左衞門殿のお宅は此方《こちら》かな」
ま「お父様《とっさま》、何方《どなた》か入っしゃいました」
庄「此方へお通り下さい……初めまして手前小野庄左衞門と申す武骨者、えー何方様《どなたさま》でございますか」
忠「手前は医者で阿部忠いえなに忠庵という者で、親父から譲られた書物がござるが、虫が付きますから版本にしたいと思いまして、就《つい》ては貴方は筆耕の御名人と承わり筆耕をして戴きたいと思います」
庄「それは折角のお頼みではございますが、手前眼病でな、誠にお気の毒ではございますが」
忠「それはいけません、誰か医者に診て貰いましたか」
庄「はい、新井町《あらいまち》の秋田穗庵という医者に診て貰いました」
忠「彼《あれ》はいけません、あんな医者に掛ると目をだいなしにして仕舞います」
庄「私《わたくし》の目は外障眼でありませんで内障眼でございます」
忠「治らぬと申しましたか」
庄「種々《いろ/\》やりましたが全快|覚束《おぼつか》ないということでございます」
忠「それでは私《わたくし》の家法の薬がありますから唯《たゞ》差上げましょう、其の代り
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