行くだろう、処が鴨川壽仙は浅草山の宿《しゅく》へ越したから、それを知らずに早稲田まで行くと空しくなる、これから貴公が往って勧めて早稲田まで行くと夜遅くなり、お茶の水辺りへ来ると、九ツになる、其処《そこ》へ私が待合《まちあわ》せて真二《まっぷた》つにするという趣向はどうだ」
忠「是は御免を蒙《こうむ》りましょう、先生は御遺恨があるか知れませんが、私《わたくし》は遺恨はございませんから、一刀の下《もと》に斬って捨るのを心得て呼出すのは難儀でございます」
蟠「貴公が殺すのではない、私《わし》が殺すのだ」
忠「殺すのではございませんが、蛇が出た時あゝ蛇が出たと云うと、殺した奴より教えた奴に取付くと云いますから止しましょう」
蟠「そんなら廃《よ》せ、首尾|好《よ》く行《ゆ》けば、先達《せんだっ》て貴公が欲しいと云った脊割羽織《せわりばおり》と金を廿両やる積りだ」
忠「誠に有難うございます、頂戴致したいは山々でございますが、これはなんですなア」
蟠「貴公だって真面目な人間ではない、先達て友之助を賭碁で欺いたときも同意して、貴公も礼を受けていようではないか、蟠作から礼を受ければ悪人の同類
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